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月別アーカイブ: 2025年9月

第12回マンション外壁コーキング 完全マスター講座

皆さんこんにちは!


スギテック、更新担当の中西です。

 

~変遷~

 

外壁目地・サッシまわり・笠木・バルコニー…建物の切れ目を守る最後の砦がコーキング(シーリング)。
この仕事は、材料・工法・管理の進化とともに、「雨を止める」だけの時代から、耐久・美観・省エネ・記録までを包含する“外皮性能の仕事”へと広がってきました。現場視点で、主要トピックを年代順に整理します。


1|〜1970s:創世期—“止水”が使命の時代

  • 材料の主役:油性パテや初期の弾性シーラント。可塑剤移行や汚染、耐候に課題。

  • 納まり:2面接着の概念が浸透前で、3面接着による早期破断や剥離が頻発。

  • 品質管理:職人の経験と勘が中心。記録文化は未成熟。

キーワードは**「とにかく漏らさない」**。寿命や美観は二の次でした。


2|1980–1990s:普及・標準化—PU/シリコーン時代の到来

  • 材料の世代交代ポリウレタン(PU)とシリコーンが普及。密着性・耐候の指標が明確になり、用途分けが進む。

  • 納まりの進化バックアップ材/ボンドブレーカーによる2面接着が標準化。目地寸法(幅×深さ)設計も一般化。

  • 住宅・外装の変化:ALCやサイディングの普及で、目地総延長が増加。シーリングは“工程の要”に。

  • 管理:試験・規格への意識が高まり、プライマーの適合・養生時間の管理が現場に定着。

**「正しく設計して、正しく打つ」**という“型”が日本の現場力として形成されました。


3|2000s:高意匠・長期保証の時代—ノンブリード&変成シリコーンへ

  • 材料の多様化:**変成シリコーン(MS)**が台頭。塗装適合・汚染抑制(ノンブリード)で意匠外壁に対応。

  • 美観要請:多彩色サイディング・タイルで色合わせ/艶管理が重要に。打ち替えでもラインの通りが価値。

  • ライフサイクル打ち替え周期を見込んだ設計・積算が浸透。保証や定期点検メニューが整備され始める。

  • 安全・工程:高所作業の安全基準強化、足場解体前の全数検査・是正文化が定着。

**「止める+魅せる」**へ。汚れ・白化・ブリスター対策が当たり前に。


4|2010s:外皮性能×メンテナンス—気密・省エネ・記録

  • 外皮性能との接続:高断熱住宅や改修で気密(C値)が注目。サッシまわり・断熱ラインで気密シールの重要度が上昇。

  • 長寿命化:高耐候・可動大対応の製品を採用、増し打ち/打ち替えの判断基準が明確化。

  • 記録の標準化:**写真台帳・ロット管理・気象条件(露点・湿度・下地温度)**の記録が発注者要件に。

  • 診断ツール:水分計・赤外線・付着テストなど事前診断が前提になり、増し打ちNGの判断も“根拠を示す”時代へ。

「性能と履歴で語る」。工事の品質は、仕上がり+データで評価されます。


5|2020s:人手不足・環境配慮・DX—“再現性”が競争力

  • 省人化と均一化治具・ノズル・自動攪拌などでビード形状の均質化。教育動画・手順書が若手育成の核に。

  • 環境配慮低臭・低VOC、既存塗膜・石材への汚染抑制がさらに強く要請。

  • デジタル管理:現場アプリでロット・プライマー時間・気象・位置を紐づけ、検査・保証へ直結。

  • 外装更新需要:大規模修繕・リフォーム市場の拡大で、打ち替え工事の比重が増加。長期の外装計画と連動。

**「同じ品質を、誰がやっても出せるか」**が選ばれる条件に。


技術のアップデート(要点だけサクッと)

  • 材料の適材適所

    • シリコーン:耐候◎/塗装×が多い → 石材・金属・ガラス周りなど

    • PU:密着◎/上塗り前提 → 躯体・サイディングで

    • MS:塗装◎・汚染抑制○ → 意匠外壁のオールラウンダー

  • 納まりの原則2面接着(バックアップ材/ボンドブレーカー)、幅:深さ ≈ 2:1目安、最小深さを確保。

  • 気象判断露点差・湿度・下地温度でGo/No-Go。降雨・結露は厳禁。

  • 塗装適合:可塑剤移行・表面エネルギーに留意し、相性確認→試験→採用が鉄則。


発注者の“いまのニーズ”はここにある

  1. 長期耐候と保証:規格適合・ロット・試験記録まで証拠一式で提示。

  2. 美観の再現性:通り・角の立ち・色合わせ・艶。班ごとの差が出ない運用

  3. 工程・安全:足場解体前の全数検査→是正、高所安全・近隣臭気配慮の徹底。

  4. LCC提案:打ち替え周期・㎡/m単価・足場共用のライフサイクル最適化


現場の“やりがい”はこう進化した

  • 即時性の快感:均し一発でビードが決まる、雨後に漏れゼロ報告が届く。

  • 職人技の可視化:通り・角の立ち・気象判断が記録と評価に直結。

  • チーム力:段取り・下地づくり・安全養生を秒で噛み合わせる面白さ。

  • 長期貢献:自分の仕事が10年後の雨漏りゼロに効くという誇り。


これからの10年:コーキング工事は“外皮マネジメント”へ

  1. BIM/図面連携:目地設計・可動量・仕様が設計段階で確定→現場に自動配信

  2. 性能保証の細分化:材料保証+施工品質保証検査データの三位一体。

  3. 環境・健康配慮:低臭・低VOC、廃材の分別・リサイクルの標準化。

  4. 省人・省スキル:治具・プロファイルノズル・プリフォーム材で均一品質を実現。

  5. LCC最適の提案力:足場共用や外装全体と束ねた長期メンテ計画で選ばれる。


「止める・ついていく・魅せる」を、データで再現する

創世期の“止水一択”から、いまは耐久・美観・安全・記録までを一体で届ける時代。
2面接着・適材適所・気象判断・記録という“型”を磨くほど、
**選ばれる理由(ニーズ)**と、続ける力(やりがい)が同時に強くなります。
コーキング工事は、これからも建物の寿命と暮らしの快適
を底上げする“外皮エンジニアリング”です。🧰

 

 

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第11回マンション外壁コーキング 完全マスター講座

皆さんこんにちは!


スギテック、更新担当の中西です。

 

~やりがい~

 

外壁目地、サッシまわり、笠木、庇、バルコニー…
建物の動く・合わさる・切れるところを守る最後の砦がコーキング(シーリング)。
雨仕舞い・気密・断熱・美観に直結するため、発注者のニーズは精度と耐久へ、
現場の**やりがいは“漏らさない・決める・魅せる”**へと深まっています。
ここでは実務目線で、いま求められている価値と仕事の醍醐味を整理します。


1|まず押さえる:コーキングの価値軸 🧭

  • 防水・気密:雨漏り・結露・浸入風の抑制。

  • 可動追従:躯体の伸縮・歪みに割れず、剥がれずついていく。

  • 美観・仕上げ:見切り線、色合わせ、艶感で仕上がりの格を上げる。

  • ライフサイクル打ち替え時期を延ばす材料選定と施工精度。

一言でいえば、「止める・ついていく・魅せる」を再現できるかが勝負。


2|発注者別の“リアルなニーズ” 📌

ゼネコン・工務店・管理組合

  • 長期耐候と保証(○年保証・準拠規格・試験記録)

  • 納まり適合(2面接着・バックアップ材・ボンドブレーカーの徹底)

  • 工程遵守(足場解体前の全数検査・是正)

  • 塗装との適合(塗装可否・可塑剤移行対策)

オーナー・リフォーム施主

  • 雨漏り再発ゼロカビ臭の抑制

  • 色・艶・目地ラインの美しさ(既存意匠との調和)

  • 工期短縮・騒音/臭気配慮・近隣対応

ビルメン・PM

  • 年間補修計画への落とし込み(劣化優先度、㎡単価・m単価)

  • 写真台帳・材料ロット・プライマー使用記録の整備


3|材料の“適材適所”と設計の勘所 🧪

  • シリコーン:耐候◎・可塑剤に影響されにくい/塗装×(上塗り不可が多い)。

  • ポリウレタン(PU):密着◎・塗装◎/紫外線で劣化しやすく上塗り推奨

  • 変成シリコーン(MS):耐候○・塗装◎・オールラウンダー。

  • ブチル等:仮設・目地内併用など用途限定

設計の要点

  • 2面接着が原則(3面接着は割れ・剥離の原因)。

  • バックアップ材/ボンドブレーカーテープで2面化を確保。

  • 目地寸法の目安:幅:深さ ≈ 2:1(目安)、最小深さ6〜8mm、過深にしない。

  • 増し打ち/打ち替えの判断:既存が脆化・剥離なら原則打ち替え。健全で上塗り適合なら限定的に増し打ち


4|“強いコーキング会社”の提供価値🧩

  1. 下地診断力:可動量・亀裂・チョーキング・含水を見極め、増し打ちNGも言える。

  2. 気象判断と段取り露点・湿度・下地温度を見て打設可否を決める(結露NG/降雨前後の養生)。

  3. 規格準拠と記録:プライマー待ち時間、タックフリー、養生剥がし時刻をロット番号付きで台帳化

  4. 仕上げの均質性ビード形状・目地の通り・角の立ちを全班で揃える。

  5. 色合わせ:多彩色サイディングやタイル目地に近似色や多色打ちで対応。


5|“やりがい”が生まれる瞬間✨

  • 職長・施工

    • 逆V字や入隅でビードが一発で決まる快感。

    • 大雨後に「漏れなかった」と連絡が来る達成感。

  • 検査・品質

    • 2面接着/深さゲージ/はみ出しゼロで指摘なしを更新する誇り。

  • 営業・積算

    • 打ち替え/増し打ちの説明力で価格以外で選ばれる手応え。

  • 若手育成

    • マスキング・絞り・均しの手元からの成長が目に見える喜び。

共通するのは、“雨を止め、仕上げを美しく”がその日のうちに結果で返ること。


6|よくある“つまずき”と回避策 🧯

  • 3面接着 → バックアップ材不足/テープ忘れ。必ず2面化(写真で証跡)。

  • プライマー省略 → 早期剥離。メーカー指定プライマー必須、塗布量・乾燥時間を記録。

  • 深さ過多/不足 → 可動追従×。深さゲージバックアップ材径で管理。

  • 塗料との相性不良 → ベタつき・割れ。塗装可否を材料選定時に確認。

  • 気象無視 → ブリスター・白化。露点計算・湿度・下地温度でGo/No-Go判断。

  • 可塑剤汚染 → 汚れのにじみ。ノンブリード材を選択。


7|“今日から使える”チェックリスト ✅

現調・見積

  • 目地種類(躯体・サッシ・タイル・サイディング)/可動量の推定

  • 既存材質・劣化度・剥離の有無/塗装有無と相性

  • 足場・高所作業計画/近隣養生・臭気対策

施工

  • 既存撤去→清掃→プライマー2面化→充填→均し→養生剥がし

  • ロット・プライマー時間・気象の記録/写真台帳

  • 仕上がり検査(通り・欠肉・気泡・端部処理

引渡し

  • 材料明細・ロット・施工面積/m、写真台帳

  • 保証条件(可動・塗装・清掃)と次回点検時期の明示


8|“提案が通る”3プラン(Good/Better/Best)💡

  • Good(標準):MS系打ち替え+2面化徹底、標準色、保証○年。

  • Better(高耐候):ノンブリードMS/上塗り併用、UV対策、意匠色合わせ。

  • Best(長期・美観重視):高耐候+可動大対応、多色仕上げ・見切り金物併用、年次点検パック付き。
    → 各プランにm単価・想定耐用・再補修時期を添える。


9|安全・コンプラも“品質”の一部 🛡️

  • 高所・墜落防止:足場点検・フルハーネス・工具落下対策。

  • 薬剤・VOC:換気・防毒マスク・肌露出対策、カートリッジ廃棄の分別。

  • 近隣配慮:臭気・洗浄水・養生剥がし時間の告知。


10|KPIで“価値”と“やりがい”を可視化 📊

  • 品質:再漏水率(12か月)、剥離/ひび発生率、是正件数

  • 生産性:打設m/人日、手戻り率、天候起因ロス率

  • 顧客:クレーム率、レビュー/NPS、再依頼率

  • 安全:ヒヤリハット是正率、休業災害ゼロ日数


11|ニーズは“選ばれる理由”、やりがいは“続ける力” 🌟

コーキング工事は、建物の弱点を確実に守り、仕上がりの格を上げる仕事。
2面接着・適材適所・気象判断・記録という“型”でニーズに応えるほど、
「雨が止まった」「見た目が締まった」という即時の手応えがやりがいに変わります。
**雨を止め、寿命を伸ばし、仕上げを美しく。**その再現性が高い会社ほど、次の指名が集まります。

 

 

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