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第12回マンション外壁コーキング 完全マスター講座

皆さんこんにちは!


スギテック、更新担当の中西です。

 

~変遷~

 

外壁目地・サッシまわり・笠木・バルコニー…建物の切れ目を守る最後の砦がコーキング(シーリング)。
この仕事は、材料・工法・管理の進化とともに、「雨を止める」だけの時代から、耐久・美観・省エネ・記録までを包含する“外皮性能の仕事”へと広がってきました。現場視点で、主要トピックを年代順に整理します。


1|〜1970s:創世期—“止水”が使命の時代

  • 材料の主役:油性パテや初期の弾性シーラント。可塑剤移行や汚染、耐候に課題。

  • 納まり:2面接着の概念が浸透前で、3面接着による早期破断や剥離が頻発。

  • 品質管理:職人の経験と勘が中心。記録文化は未成熟。

キーワードは**「とにかく漏らさない」**。寿命や美観は二の次でした。


2|1980–1990s:普及・標準化—PU/シリコーン時代の到来

  • 材料の世代交代ポリウレタン(PU)とシリコーンが普及。密着性・耐候の指標が明確になり、用途分けが進む。

  • 納まりの進化バックアップ材/ボンドブレーカーによる2面接着が標準化。目地寸法(幅×深さ)設計も一般化。

  • 住宅・外装の変化:ALCやサイディングの普及で、目地総延長が増加。シーリングは“工程の要”に。

  • 管理:試験・規格への意識が高まり、プライマーの適合・養生時間の管理が現場に定着。

**「正しく設計して、正しく打つ」**という“型”が日本の現場力として形成されました。


3|2000s:高意匠・長期保証の時代—ノンブリード&変成シリコーンへ

  • 材料の多様化:**変成シリコーン(MS)**が台頭。塗装適合・汚染抑制(ノンブリード)で意匠外壁に対応。

  • 美観要請:多彩色サイディング・タイルで色合わせ/艶管理が重要に。打ち替えでもラインの通りが価値。

  • ライフサイクル打ち替え周期を見込んだ設計・積算が浸透。保証や定期点検メニューが整備され始める。

  • 安全・工程:高所作業の安全基準強化、足場解体前の全数検査・是正文化が定着。

**「止める+魅せる」**へ。汚れ・白化・ブリスター対策が当たり前に。


4|2010s:外皮性能×メンテナンス—気密・省エネ・記録

  • 外皮性能との接続:高断熱住宅や改修で気密(C値)が注目。サッシまわり・断熱ラインで気密シールの重要度が上昇。

  • 長寿命化:高耐候・可動大対応の製品を採用、増し打ち/打ち替えの判断基準が明確化。

  • 記録の標準化:**写真台帳・ロット管理・気象条件(露点・湿度・下地温度)**の記録が発注者要件に。

  • 診断ツール:水分計・赤外線・付着テストなど事前診断が前提になり、増し打ちNGの判断も“根拠を示す”時代へ。

「性能と履歴で語る」。工事の品質は、仕上がり+データで評価されます。


5|2020s:人手不足・環境配慮・DX—“再現性”が競争力

  • 省人化と均一化治具・ノズル・自動攪拌などでビード形状の均質化。教育動画・手順書が若手育成の核に。

  • 環境配慮低臭・低VOC、既存塗膜・石材への汚染抑制がさらに強く要請。

  • デジタル管理:現場アプリでロット・プライマー時間・気象・位置を紐づけ、検査・保証へ直結。

  • 外装更新需要:大規模修繕・リフォーム市場の拡大で、打ち替え工事の比重が増加。長期の外装計画と連動。

**「同じ品質を、誰がやっても出せるか」**が選ばれる条件に。


技術のアップデート(要点だけサクッと)

  • 材料の適材適所

    • シリコーン:耐候◎/塗装×が多い → 石材・金属・ガラス周りなど

    • PU:密着◎/上塗り前提 → 躯体・サイディングで

    • MS:塗装◎・汚染抑制○ → 意匠外壁のオールラウンダー

  • 納まりの原則2面接着(バックアップ材/ボンドブレーカー)、幅:深さ ≈ 2:1目安、最小深さを確保。

  • 気象判断露点差・湿度・下地温度でGo/No-Go。降雨・結露は厳禁。

  • 塗装適合:可塑剤移行・表面エネルギーに留意し、相性確認→試験→採用が鉄則。


発注者の“いまのニーズ”はここにある

  1. 長期耐候と保証:規格適合・ロット・試験記録まで証拠一式で提示。

  2. 美観の再現性:通り・角の立ち・色合わせ・艶。班ごとの差が出ない運用

  3. 工程・安全:足場解体前の全数検査→是正、高所安全・近隣臭気配慮の徹底。

  4. LCC提案:打ち替え周期・㎡/m単価・足場共用のライフサイクル最適化


現場の“やりがい”はこう進化した

  • 即時性の快感:均し一発でビードが決まる、雨後に漏れゼロ報告が届く。

  • 職人技の可視化:通り・角の立ち・気象判断が記録と評価に直結。

  • チーム力:段取り・下地づくり・安全養生を秒で噛み合わせる面白さ。

  • 長期貢献:自分の仕事が10年後の雨漏りゼロに効くという誇り。


これからの10年:コーキング工事は“外皮マネジメント”へ

  1. BIM/図面連携:目地設計・可動量・仕様が設計段階で確定→現場に自動配信

  2. 性能保証の細分化:材料保証+施工品質保証検査データの三位一体。

  3. 環境・健康配慮:低臭・低VOC、廃材の分別・リサイクルの標準化。

  4. 省人・省スキル:治具・プロファイルノズル・プリフォーム材で均一品質を実現。

  5. LCC最適の提案力:足場共用や外装全体と束ねた長期メンテ計画で選ばれる。


「止める・ついていく・魅せる」を、データで再現する

創世期の“止水一択”から、いまは耐久・美観・安全・記録までを一体で届ける時代。
2面接着・適材適所・気象判断・記録という“型”を磨くほど、
**選ばれる理由(ニーズ)**と、続ける力(やりがい)が同時に強くなります。
コーキング工事は、これからも建物の寿命と暮らしの快適
を底上げする“外皮エンジニアリング”です。🧰

 

 

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